そして迎えた出産の日。
昼頃から少しずつ前駆陣痛が始まり、夜8時頃、「そろそろ始まりそうです」と連絡が入りました。まだ余裕のある時間だったので、3歳のお兄ちゃんと5歳のお姉ちゃんは、先に眠りにつきました。
その時間は、お母さんにとって、自分の内側へ集中するとても大切な時間になりました。
子どもたちが安心して眠っている。
その静かな時間が、お産の流れをぐっと深めていったように感じます。

彼女とは、前回のお産から積み重ねてきた時間があります。
妊婦健診では、お産のことだけではなく、お互い一人の女性として、人生について語り合うこともありました。だから彼女は、私の前で無理をしません。飾りません。ありのままでいてくれます。
そのことを、彼女自身も「恵里子さんがいつもありのままだから~、私もそのままの自分でいられる~」と話してくれました。
お産の途中、私は内ももの力を抜いてもらおうと、そっと手でさすっていました。
すると彼女が一言。
「えりこさん、それやめて。それ違う。」
私はすぐに手を止めました。
この一言が、私はとても嬉しかったのです。
助産師として、言われなくても女性を感じて望まれるケアを提供できることが素晴らしいのだけど、私は、それだけができるわけではなく。
でも、それ以上に大切にしたいのは、「違う」と言える関係であることです。遠慮せず、自分の感覚をそのまま伝えられること。
その関係性があるからこそ、お母さんは余計な我慢をせず、本来持っている力をそのまま発揮できるのだと思います。
私はいつも、「お産は技術だけではなく、関係性がとても大切です」とお伝えしています。
でも、その意味は、言葉だけではなかなか伝わりません。彼女とのお産は、そのことを改めて教えてくれました。信頼関係があるからこそ、お母さんは安心して自分をゆだねることができる。
そして助産師も、お母さんの声を受け止めながら、一緒に歩いていける。
そんなお産でした。

そして、いよいよ赤ちゃんが生まれるその時——。
眠っていたお姉ちゃんとお兄ちゃんを呼びに行きました。
普段なら、寝起きは少し機嫌の悪いお姉ちゃんが、その日は驚くほど自然に目を覚まし、まっすぐお母さんのもとへ歩いていったのです。
その姿を見ながら、「今日、この家族みんなで赤ちゃんを迎える日なんだ」と、私は静かに感じていました。

クバの葉助産院 はしもとえりこ
